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交通事故訴訟における第一審勝訴の場合の控訴審【附帯控訴】

今回のテーマは訴訟における控訴と附帯控訴です。
交通事故で過失割合に大きく争いがあると高確率で訴訟になります。
例えば当方が無過失を主張し、相手方が7(当方):3(相手)を主張している事案において、第一審で過失割合が2(当方):8(相手)の判決が出て相手方が控訴するかわからないという事案で当方は控訴すべきなのか?他に良い方法があるのか?というのが今回のテーマです。


事案

物損のみの交通事故で修理代等に争いがなく過失割合が唯一の争点。
当方は無過失を主張していたが、内心では過失割合2(当方):8(相手)以上であれば和解しても良いと考えていました。
これに対し、相手方は過失割合7(当方):3(相手)の主張を譲らず、結局、第一審判決において過失割合2(当方):8(相手)の判決が出ました。

先生!訴訟の第一審お疲れ様でした。私の無過失が認められなかったのは残念ですが、私の車も動いていた以上仕方ないかもしれませんね。この後の流れを教えてください。

判決に不服がある場合は双方が判決の送達から2週間以内であれば控訴できます。控訴においては控訴の利益が必要なので仮にこちらの主張が全て認められていた場合には控訴できるのは相手方だけです。

うーん。ぶっちゃけ私はこの判決を読んで納得してしまったので相手が控訴してこないならこちらも控訴しなくていいと思っています。ただし、ここまでしつこく争われたこともありますし、相手が控訴してくるならガチンコで争いたいです。

控訴した場合の審理対象

今回のケースで仮に相手のみが控訴した場合、その審理対象は過失割合が2〜10(当方):0〜8(相手)になるかという範囲でのみ審理されます。

仮に当方のみが控訴した場合、その審理対象は過失割合が0〜2(当方):8〜10(相手)になるかという範囲でのみ審理されます。

これを控訴における不利益変更禁止の原則といいます(民事訴訟法304条)。
ネーミングからだと微妙に分かりにくいのですが、思いっきり噛み砕くと、控訴した方にとってその相手が控訴しない限り控訴審判決は第一審判決より不利になりませんという原則です。
例外は後述する①相手も控訴した場合と②相手が附帯控訴した場合です。

ちょっと待ってください!どうせ控訴に付き合わされるならこちらが無過失になる余地も残したいので第一審と同じように全てを審理対象にしたいです。ということは、相手が控訴するかどうかに関係なくこちらも念の為に控訴しておかないといけないということですか?

相手が控訴したかどうかを探ったり、念の為に控訴して不要なら取り下げるといった駆け引きは無駄でしかありません。そこで、本件のように「相手が控訴しないなら判決を受け入れるけど控訴するなら当方無過失まで含めて争いたい」といった場合には附帯控訴という手続を利用することになります。

控訴のデメリット

控訴すると半年程度は長引きますし、被告側であればその分遅延損害金もかさみます。
また、控訴審の印紙代(裁判所手数料)は第一審の1.5倍します。
控訴棄却されると訴訟費用の請求を受けるリスクもあります。
一方で控訴審で判決がひっくり返る可能性は統計的にみてさほど高くありません。
弁護士費用の問題もありますので判決に多少不満がある程度では控訴までしないことがむしろ一般的なように思いますので、本件においても相談者(猫)側からの控訴は特段の要望がないと行わないと思います。

附帯控訴(民事訴訟法293条)

そもそも控訴する方は請求を拡張できるので控訴される方にも請求の拡張を認めようという趣旨から認められた制度です。
相手が控訴してきた場合に当方が附帯控訴することで審理対象は第一審と同じように0〜10(当方):0〜10(相手)となります。
附帯控訴の申立て期限は控訴審の口頭弁論終結までで、判決送達から2週間以内である控訴よりも余裕があります(裁判所手数料は通常の控訴と変わりません)。
ただし、デメリットとして附帯控訴はあくまでも控訴に付随するものですので控訴の取り下げや却下があると原則として附帯控訴は失効します。

※控訴の取り下げについて、第一審と異なり相手の同意が不要になっている点に注意

相手の出方にかかわらず、当方として無過失まで争いたい場合には附帯控訴ではなくこちらからも控訴しておくべきです。ただ、第一審の判決に納得しているという前提があるのであれば有用な制度かと思います。
上述のデメリットから相手が強気に見えても控訴してこないケースはいくらでもありますので判決に納得しているのであればこちらから控訴することで無駄に長引かせるリスクがあると思います。

まとめ

通常の控訴は判決送達から2週間以内と〆切が厳しいので方針については事前にじっくり検討しておきましょう。

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