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離婚の際に公正証書を作成すべきか

今回のテーマは「離婚の際に公正証書を作成すべきかどうか」です。
結論としては、個人的には調停の方が便利だと思いますが、公正証書ならではのメリットもあるので事案によって使い分けるのが良いと思います。


事案の概要

先生!このたび夫と離婚することになったのですが離婚届だけで済ますのは何だか不安です。公正証書を作った方がいいのでしょうか?
私の場合、子どもがいて私が引き取るので養育費の取り決めが必要ですが財産分与は一括払いです。

ご相談いただいた事例だとお子様がいらっしゃるので離婚後も継続的にお金(養育費)を受け取る必要があり、この支払いを担保するために書面を作成することをお勧めします。
一方で、子どもがいなくて財産分与などの問題は一括で済ませてしまうようなケースではそこまでする必要がないケースがほとんどかと思います。

離婚に際して別途書面を作成すべきケース

(a)養育費を定める場合や財産分与・慰謝料(以上要するにお金の支払い)を分割払いにするようなケースでは途中で払われなくなるケースが多いのでそうなった場合に備えて書面を作成すべきです。

(b)協議離婚にする場合に離婚届を誰がいつ出すか、私物の返却をどうするか、面会交流の条件をどうするかなどお金以外の細かい条件を確認したい場合にも書面を作成すべきです。

一方で当事者間の感情的対立がそこまでなくて離婚後に何のやり取りもする必要がないようなケースでは書面作成は不要です。

書面といってもいろいろな種類のものがあると思いますがどれがいいのですか?
インターネット検索で出てくる離婚協議書の雛形をアレンジして使えば費用もかからないと思います。

目的に応じて使い分けるのがベストです。

書面の種類ごとのメリット・デメリット

①自作の合意書

インターネットや書籍の雛形を自分でアレンジして用いることを想定しています。
【メリット】
・お手軽で費用も手間もかからない。
・相手にとっても合意書に応じる(サインする)心理的ハードルが低い。

【デメリット】
・条項の違反があった場合には別途裁判(訴訟または調停)が必要。
・専門家のチェックを経ていないので、条項の中身が特定されておらず無効になっているなどのリスクがある。
 なお、弁護士の離婚協議書チェックの費用相場はざっくり5万円〜10万円(税抜)程度かと思います。

②公正証書

公証役場でお金を払って作ってもらう書面です。
【メリット】
・お金の支払いに関する条項(上記(a))についてのみ強制力を持たせられる(※条項違反があれば裁判を経ずに相手の財産を差し押さえ可能という意味です。以下同じ。)。
・当事者の不出頭が比較的緩やかに認められているので、弁護士に依頼すれば公証役場に行かないことも可能。
(・離婚調停より早いと言わているが申込から1か月〜1か月半程度なのでスピードは同程度。)

【デメリット】
・お金の支払いに関するもの以外の条項(上記(b))については強制力を持たせられない。
例えば、夫は本日離婚届を役所に提出するという条項に違反して夫が離婚届を出さない場合、結局離婚のために裁判をしなければいけなくなります。
・公証役場への費用は、当事者間で動くお金の金額に応じて変わりますが、以下で述べる離婚調停よりもだいぶ高い。
・印鑑証明書が必要だったりと裁判所よりも必要書類が多い。

③離婚調停による和解調書

裁判所に離婚調停を申し立てて初回期日で和解する方法です。
【メリット】
・お金に関する条項以外(上記(a)+(b))にも強制力を持たせられる。

例えば離婚自体についてもその場で調停離婚とすることができます。
※「調停離婚」とは調停の場で離婚の効力を発生させることで、その後の役所への届出は事後的な手続きに過ぎません。戸籍に「調停離婚」と記載されます。
これに対し、「協議離婚」は離婚届を役所に出すことで離婚の効力を発生させる方法です。
なお、調停の場合でも協議離婚とすることもできるので戸籍への記載が気になる場合は調整できます。


・費用が公正証書より安い(離婚調停につき収入印紙1200円+予納郵便切手1022円)。
 ※予納郵便切手は本記事執筆時点の東京家裁のもの。頻繁に変動するので要確認。
・優秀な裁判所書記官が書面をチェックしてくれる。

【デメリット】
・当事者本人の出頭が原則(弁護士をつけていれば直接顔を合わせるのは避けられますが裁判所に行く必要はあります)。
・裁判沙汰になるということ自体を嫌う当事者から利用を嫌がられることがある。

ちょっと難しくてよくわからないので私のケースでどれがいいのかまとめてください。

本件でどれがいいのか

本件は、お子さんがいらっしゃって今後養育費の支払いがありますので、基本的には②公正証書か③離婚調停による和解調書がいいです。

ただし、相手が②公正証書や③離婚調停に協力してくれない場合はとりあえず①自作の合意書を作っておけば後で未払いになって養育費の調停をした際に、(相場から大幅に外れていなければ)合意書の金額のまま認められる可能性が高いので、最低でも①自作の合意書は作るべきです。

②公正証書がいいのか③離婚調停がいいのかですが、上述した通りほとんど全ての点で③離婚調停が勝っていますので基本的には③離婚調停がいいと思います。

例外的に、ご主人がどうしても出頭したくないとか、裁判沙汰を嫌う場合で公証役場の費用もご主人が負担するような場合には②公正証書でもいいと思います。

以上



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