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立退料ってなんだろう…?

立退料についてその内訳や算定方法等を解説した記事です。

今回のテーマは『立退料(たちのきりょう)』です。

「知り合いが立退料として家賃○○か月分を貰った!」などという話は聞いたことがあっても実際に一般の方にとって問題になるケースは稀ですからそもそも立退料って何?という方も多いと思います。

そこで、今回は立退料が発生する場合とその金額について解説していきます。

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相談者: 先生!今住んでいるアパートの大家がアパートを建て替えたいから出て行ってくれって言ってきてるんですよ。立退料がどうとか言ってたんですが立退料って何のことですか?

私:立退料とは賃貸人から賃借人に対して、土地・建物の明渡しを条件に支払われる金銭です。
もっとも法律上は立退料の支払義務などは規定されていませんから当事者間で任意に支払われる金銭ということになります。

相談者:払う義務のないお金を払うなんてことがあり得るのですか?

私:ちょっと複雑な話になるんですが、一般の賃貸借において、賃借人が任意に出て行く場合を除いて賃借人に出て行ってもらうには以下の3つの方法があります。

①期限の定めのある賃貸借契約の場合

*要件*
ア 契約期間満了の1年前から半年前までに更新しない旨の通知をする
イ 賃借人が使用を継続している場合に遅滞なく異議を述べる
ウ 正当事由が認められる

②期限の定めのない賃貸借契約の場合

*要件*
ア 解約の申し入れから半年が経過
イ 賃借人が使用を継続している場合に遅滞なく異議を述べる
ウ 正当事由が認められる

③家賃の不払い等契約違反があった場合

つまり、大家が落ち度のない住人を強制的に追い出そうとする場合は上記①か②ですから色々と大変な手続を踏む必要があるわけです。

この①②における要件ウの正当事由の判断に立退料が関係してきます。

後述するように正当事由は様々な事情を総合考慮しますが、建物明渡し請求訴訟で立退料の支払いがゼロで済むということは通常ありません。

相談者:知らなかったです。なんでこんなことになっているんですか?

私:住居というのは生活の基盤です。住居不定では仕事も出来ませんから手厚く保護されているのです。

ただし、最近流行の定期賃貸借についてはこの限りでは無く、契約年数満了で契約が終了しますので注意して下さい。定期賃貸借については当ブログの第五回「大家さん必見!あなたの定期賃貸借契約、もしかして無効かも…?」をご参照ください。


また、当然ですが③賃料不払いの場合など借りる側に責められるべき事由があるケースでは立退料は問題になりません。

相談者:①及び②ウの正当事由はどのように判断されるのですか?

私:条文上は賃貸人及び賃借人の使用の必要性、賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況及び現況、立退料の申出の状況を総合考慮するとなっています。
また、立退料について判例は「立退料の提供は、他の事情と統合されて正当事由があるとされるのであるから、賃借人の被る損害の全部を補償するものでなければならない理由はない」としていますので、事案によっては移転による損失全部が補償されるとは限らないことにも注意が必要です。

相談者:例えば、建物の老朽化が進んでいる等で賃貸人の使用の必要性が高い場合は立退料が低額になると言うこともありうるわけですね。
ところで立退料の具体的な中身ってどうなっているんですか?

私:借家の場合、借家権価格、移転実費、営業上の損失補償、造作等買取り・費用償還請求が立退料の中身です。
居住用の借家の場合、現在の裁判例の傾向では移転実費+現在の賃料と移転先の賃料との一定期間の差額になることが多いです。

ただし、賃貸人側に有利な事情が無い中でどうしても明渡しを実現したいようなケースでは居住用の借家でも高額になることもあります。強制執行までいくと手続費用(引っ越し業者及び鍵屋の手配や荷物の一時保管場所の確保、裁判所手数料や弁護士報酬等)が相当額にのぼるため、立退料が多少高くなっても任意に出て行ってもらえるメリットは大きいわけです。

なお、今回のケースと異なりますが、営業用の借家の場合、営業上の損失を中心に考慮しますから居住用より金額が上がる分、より複雑になります。

相談者:立退料の相場とかってあるんですか?

私:賃料の6か月から1年分などと言われることもありますが、相場はあってないようなものです。そもそも大家の経済状況にも左右されるところ、一般的な居住用アパートの場合、大家が裕福とは限りません。

立退料の交渉については様々な考慮要素があり複雑です。
また最終的には建物明渡し訴訟に発展しますので早い段階で弁護士に依頼することが重要かと思います。

相談者:そうなんですね。大家さんの弁護士と直接交渉するのは大変そうですし、先生にお願いします。

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