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2025年11月17日更新
今回のテーマは交通事故で当方に交通違反があり、相手方に怪我を負わせたようなケースで不起訴になるのはどのような場合かというものです。
交通事故を起こした場合、刑事・民事・行政でそれぞれ処分がありますが、刑事処分については前科を避けたいというご相談が多いので簡単に解説したいと思います。
※起訴不起訴は最終的には検察官の専権事項ですので微妙な事案でどうなるかは分かりません。本記事はあくまでも一般論ですので個別の事案については弁護士にご相談ください。
目次
先生!交通事故を起こしてしまったのですが前科がつくと困るので何とか不起訴にして下さい。
結論から言うと弁護士の介入で結果が変わるケースは限定的です。まずは刑事手続の流れを説明しましょう。
①事件発生後、直ちに逮捕されるのは行為の結果が重大だったり、悪質性の高いケースです。
多くの事案では逮捕せずに在宅で捜査が進みます。
②警察が一通り捜査をすると事件を検察官に送致します。そこで検察官が起訴するかどうかを決めますが、これは検察官がその裁量で決定できます(起訴便宜主義・刑事訴訟法248条)。
ちなみに、逮捕されずに在宅で捜査が進んだ場合、起訴するかどうかの判断に通常1年以上かかります。
③略式起訴の場合は罰金を払って終了。正式な起訴(公判請求)の場合は刑事裁判へ。
刑事裁判は罪状を認めている場合は1〜2回で終了します。
なるほど。それで起訴するかどうかは具体的にどうやって決めているのですか?
検察官に裁量があると言っても事案ごとに処分がバラバラすぎると不公平なので検察は相場を大事にします。具体的には以下の考慮要素から判断します。
| ①結果の重大性 |
| ②行為の悪質性 |
| ③被害者側の事情 |
| ④その他の事情 |
考慮要素を4つ挙げましたが①と②が特に重要です。
他人を怪我させた場合、大きく以下の5つに分類できます。
❶軽微な怪我(加療期間3週間程度まで)
→不起訴の可能性あり
❷比較的軽傷(加療期間3週間〜3か月程度)
→通常罰金刑
❸重症(加療期間半年以上)
→通常正式な起訴(公判請求)だが他の事情では罰金刑の余地もある
❹重篤な傷害(加療期間1年以上〜不治)
→通常正式な起訴(公判請求)
❺死亡
→通常正式な起訴(公判請求)
シンプルに考えると上記のようになりますが、他にも被害者の数や属性も考慮要素です。
命の価値は等しいと言う考えもありますが、被害者が幼いと刑罰は重くなる傾向があります。
あれ…?不起訴ってかなり限定的なんですね。
次に説明する②行為の悪質性と合わせて大体の相場が決まる印象です。単なる交通違反にとどまらず、他人に怪我をさせた場合で不起訴になるのはどちらかと言うと限定的なケースだと思います。
道路交通法違反の程度で判断しますが、重要なポイントは法定刑が同じでも起訴不起訴の判断において同じように取り扱われるわけではないと言うことです。
例えば赤信号無視(道交法7条)違反と徐行義務違反(同法42条)の法定刑は同じですが、起訴不起訴の判断においては前者の方が悪質と判断されます。
悪質性によって大まかに類型化する考え方が参考になりますが、あまり細かい話をしてもしょうがないので、交通事故において特に悪質と判断されるものをご紹介します。
⑴交通三悪
無免許運転、酒酔い運転、救護不措置(ひき逃げ)です。
これらは最も悪質な部類です。
余談ですが、司法研修所の教官からひき逃げをしたら不起訴は絶対にないので前科が付く関係で弁護士登録に支障が出るので絶対に逃げるなという話があったのを思い出します。
⑵赤信号無視、大幅なスピード違反、センターラインオーバー、一時停止無視、居眠り運転など
これらは民事の過失相殺でも過失割合が大幅に変更されるような要素です。
被害者側に落ち度がある場合(過失割合が大きい等)に処分を軽くすると言う考え方があるとされていますが、私の感覚としてはかなり限定的な事案に限られるように思いますので説明を割愛させていただきます。
その他の事情にも様々な考慮要素がありますが、起訴不起訴の判断に影響を与えうるものとしては被害者との示談があります。
交通事故の場合、民事上の請求は怪我の治療終了後になって刑事手続きとは足並みが揃わないので示談の成立そのものというよりは任意保険に加入していること自体が有利な情状として扱われます。
例外的に無保険のケースだと賠償金の支払いが可能であれば弁護士に示談交渉を依頼することになると思いますが、客観的に相当の賠償金の支払いがあるかどうかや示談書に宥恕文言があるかが重要な事情です。
その他、謝罪申し入れがあったかどうかなども影響は小さいにせよ無意味な事情ではないと思います。
結局不起訴になるのはどのようなケースですか?
上記考慮要素①結果の重大性で被害者の怪我が軽微➕②行為の悪質性において特に悪質な行為がない場合などは不起訴になる可能性が十分あると思います。
基本的には考慮要素の①✖️②で処分の大体の相場が決まりますが、判断が微妙なケースでは弁護活動の結果で結果が変わることもあるでしょう。
弁護士さんにお願いした方がいいんですか?
正直、全ての人にお勧めできるわけではないので上記の考慮要素がご自身の事案でどうなっているか等検討なさってください。
ひき逃げ事案などそもそも不起訴獲得が難しいことが明らかな事案ではご依頼はお断りさせていただいております。
そもそも不起訴になるような事案では上記で述べた相場(他の事案との公平性)という観点から不起訴になるので弁護士の介入で結論が変わる事案は限定的かと思われます。
以上