ブログ

【不動産を少しでも早く売却】かかる時間、手続の流れや注意点など

今回のテーマは不動産の任意売却です。
弁護士業務をしていると借金問題、離婚、相続などの場面で少しでも早く不動産を売却してお金にしたいという場面があります。
実際に弁護士が受任した案件の解決のためになるべく早く不動産を売る場合にどれくらいの時間と手間がかかるのかを解説した記事になります。


事案の概要

先生!実は実家の一軒家を相続したのですが、相続人が誰も欲しがっていなくて困っています。なるべく早く売ってお金に変えてしまうのがいいと思うのですがどこから手をつけたらいいか教えてください。

はい。信頼できる不動産屋に相談に行くのがいいと思いますが、せっかくですので手続きの流れを説明したいと思います。

まずやることは不動産屋探し

不動産の取引は直接買主を見つけてくる方式と不動産屋に仲介してもらう方式があります。

大きな金額でない物件を親戚等に売却する場合であれば直接取引でもいいと思いますが、そうでない場合は①きちんと契約書を作ってもらえる、②買主を見つけてもらえるというメリットがあるので多少お金はかかりますが不動産屋に仲介してもらいます。

ちなみに仲介手数料は後述するように宅建業法で上限が決まっています。

どこの不動産屋に頼んでも同じなんですか?

結論から言うと全然違います。

不動産会社の選び方

不動産売却に伴って発生する様々なトラブルをいかに売主に負担をかけずに解決してくれるかどうかという点や契約書や関係法令・実務運用にどの程度詳しいか、きちんと意思疎通できるかどうかなどもチェックポイントではありますが、やはり一番大事なのは高値で買いたいという人を見つけてきてくれるかどうかです。

まず、大手不動産会社は金額の高い不動産でないと取り扱ってもらえませんのでそういった物件の場合幅広くあたってみる必要があります。

仲介の方法にもいくつかあって普通は媒介契約を結んでレインズという情報サイトに掲載してもらいます。

しかし、それだと時間がかかるので、とにかく早く売りたい場合には①業者が買い取るか、②業者の取引先(顧客)に売却を交渉してもらうことになります。

①の業者買取だとどうしてもかなり安くなってしまいますので、②業者の取引先等にあたってもらうことになります。この場合については各社得意な物件の種類やエリアがあるように思いますのでそのあたりに着目して選ぶことになります。

買主を探すのにかかる時間についてはこちらから期限を設定することである程度コントロールできますが、私は通常長くても1か月程度で見つけてもらいます。

売却の下準備

買主が見つかったらもうやることはなさそうですね!

買主が見つかったとしてもすぐに売却できるわけではありません。

まず、不動産登記を取得して①所有者が正しいか、②所有者の住所が正しいか、③抵当権の表記が正しいかについて確認しましょう。

①所有者が正しいかですが、私がこれまで経験したケースとして相続したにもかかわらず相続登記未了の場合(例えば所有者は父なのにとっくに亡くなった祖父名義のままなど)があります。
この場合、遺産分割協議を成立させて相続登記してからでないと売れません。
司法書士に別途依頼して遺産分割協議書、登記、委任状、印鑑証明書などを集める必要があり相続人が全面的に協力してくれる場合であってもなかなか大変です。
仮に相続人が非協力的な場合は遺産分割調停申立てが必要となり数年単位で時間がかかる可能性があります。

②所有者の住所について、引っ越ししたにもかかわらず不動産登記を更生(変更)していないケースがあります。
これについては修正に必要な資料は住民票や戸籍の附票のみですが、司法書士への手数料もかかりますし見落としがちな点ですので注意しましょう。

③抵当権の表記については抵当権は消滅しているのに抹消していないケースがあります。
これも司法書士に手数料を払って抹消しないと売れませんので気をつけましょう。

なお、対象物件の固定資産評価証明書が必要なので都税事務所へ行って取得しておきましょう。

売却に伴う手数料は結局いくらかかるのか

売却代金から差し引かれる手数料なんかの合計金額とその内訳が知りたいです。

以上の下準備を終えるといよいよ売買契約書の作成になります。

ここまでくると手数料の合計がわかります。戸籍(附票含む)や固定資産評価証明書の取得費用など細かい出費を除くと大別して以下の通りです。

①司法書士費用、②不動産業者への仲介手数料、③所有権移転日までの固定資産税・都市計画税、④(マンションの場合)管理修繕費の滞納分

①司法書士費用ですが、例えば上記で説明した住所の更生であれば2万円弱、抵当権抹消で3万円程度です。また、遺産分割未了の場合の所有権移転登記は10万円程度です(いずれも実費込み)。
なお、売買契約における所有権移転登記費用については通常全額買主負担となりますのでここでは発生しません。

②不動産業者への仲介手数料ですが、400万円超の物件であれば取引物件価格(税抜)×3%+6万円+消費税と宅建業法に定めがあります。

③所有権移転日までの固定資産税・都市計画税ですが、通常は1年分を前払いしている状態かと思いますので所有権移転日以降の分を日割り計算して売却代金に上乗せしてもらいます。未払いであれば売主の負担で滞納分の清算が必要です。

④(マンションの場合)管理修繕費の滞納分ですが、区分所有法で新買主に引き継がれてしまうので売主の負担で売却時点までに清算する必要があります。

まとめると、滞納がないような物件であれば仲介手数料が一番大きな出費になろうかと思います。

売却までにかかる時間

思ったより大変ですね。結局売却まで急いだとしてどれくらいでお金が入ってきますか?

ここまでの説明でケースバイケースなのはお分かりいただけたかと思いますが最大限急いでも代金が入ってくるまで2〜3か月程度はかかります。
(私がやる場合はいちいち関係各所に確認を取る必要がありますので、ご本人で直接やるのであればもう少し早いかもしれません。)

ちなみに普通に売却する場合(媒介契約を締結して売却)は最低でも4か月半かかるとの不動産会社のホームページの記載を見つけました。

まとめ

もちろんある程度時間をかけて高値で売るに越したことはないのですが様々な事情で早期の売却が必要な場合の流れと費用と時間を解説してみました。

法律問題そのものではなく、専門外といえば専門外ですのでこの辺りで締めさせていただければと思います。

関連記事

  1. 【2020/11/12更新】婚姻費用・養育費ってどうやって決まる…
  2. 不貞による慰謝料請求のいろは
  3. 相続法改正で慰留分の請求が容易になります。
  4. 立退料ってなんだろう…?
  5. 回転寿司で醤油差しを舐める行為について
  6. 別居後離婚前に不貞するリスク
  7. コロナ不倫!?探偵費用って請求できるの?
  8. クーリングオフは最強のカード

目次

PAGE TOP