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クーリングオフは最強のカード

クーリングオフについて事案形式で解説する記事です。


暑い日が続きますね。ということで、今回のテーマはどこか涼しげな名前の“クーリングオフ”です。

ブログのタイトル通り、クーリングオフというのは最強のカードなのですが、法律が複雑でわかりにくいため一般の方にとっては誤解されている部分が多いかと思います。

今回取り上げる結婚相談所以外の類型にも、もちろん対応しておりますので、お心当たりのある方はぜひご相談ください。

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相談者: 先生!消費者問題で相談があるのですが!

私:はい。消費者問題というのはいわゆる消費者法(消費者契約法や特商法など)が問題になる事案ですね。事業者vs消費者という図式になっていることが特徴です。

相談者:私は、先月結婚相手の紹介サービスに申し込んだんです。1年間のサポートで100万円もしたんですが、いい人が見つかると良いなと思って。
ところが、全然いい人を紹介してくれないのでお金を返して欲しいんですが高額な違約金を請求されて困っています。

私:そもそもいったん有効に成立した契約について、解除や取り消し、無効などを主張することは難しいのです。民法には錯誤・詐欺・強迫について取り消しの規定がありますが裁判所に認めさせるのは並大抵のことではありません。
また、消費者契約法には不実告知(事実と異なることを告げられて契約すること)があった場合に取り消せる旨規定する条文などがありますが、録音やメールでのやりとりなどが無い限り証拠が足りず認められないことになってしまいます。

相談者:泣き寝入りですか…。

私:そこで強力な武器になるのがクーリングオフという制度です。
クーリングオフが認められるための要件は一見すると難しいのですが実際は多くのケースで主張可能ですし、訴訟における立証のハードルも上記の法律構成と比べて低いので非常に使い勝手の良い制度になっています。

相談者:私の事案では適用可能なんですか?クーリングオフの要件を教えて下さい。

私:まず、ⅰ特定の類型の取引に該当する必要があります。具体的には以下の14類型です。
①訪問販売
②電話勧誘販売
③マルチ商法
④サービス取引
⑤内職・モニター商法
⑥訪問購入
⑦個別信用購入あっせん
⑧預託取引
⑨ゴルフ会員権契約
⑩不動産特定共同事業契約
⑪保険契約
⑫宅地建物取引
⑬投資顧問契約
⑭共済契約

ちなみに、よくある誤解として通信販売にもクーリングオフの適用があるというものがあります。
たしかに通信販売では引き渡しから8日以内であれば解除できるという規定が特商法にありますが、これは特約で排除可能ですのでクーリングオフではありません。

相談者:キーワードだけだとよく分からないですね。私のはどれに当たりますか?

私:④のサービス取引です。これは、正式には特定継続的役務提供といいます。
これに該当するかは以下の要件で判断します。


⑴ 役務の提供を受ける者の身体の美化又は知識若しくは技能の向上その他のその者の心身又は身上に関する目的を実現させることをもつて誘引が行われるもの
⑵ 役務の性質上、前号に規定する目的が実現するかどうかが確実でないもの
⑶ 政令で定めるものであること

⑶要件が重要なのでここを見ると、結婚相手の紹介サービスは役務提供期間が2か月超で金額が5万円超であれば該当するとなっています。

相談者:いけそうですね!クーリングオフそのものの要件って他には何があるんですか?

私:上記のⅰ特定の類型に該当すること。
ⅱ撤回解除の意思表示を書面で行うこと。
ⅲ法定書面を受領した日から8日又は20日を経過していないこと。
ⅳ適用除外に当たらないこと。

の4つになります。

相談者:あれ…?私が契約したのは先月って言いましたよね?タイムオーバーってことですか?

私:それが大丈夫なんですよ。そもそも、上記①~⑭の類型の取引を行う場合、法定書面を遅滞なく交付することが義務づけられています。違反すると刑事罰もあります。
そして、法定書面に不備がある場合、上記ⅲのクーリングオフ期間は進行しないのです。
具体的な記載事項は以下の画像の通りですが、省令まで精査している事業者はなかなかいないためほとんどの事案で要件不備が認められます。

逆に言えば、事業者からすれば上記①~⑭の類型に当たるビジネスを行うには多大なるリスクが伴いますので弁護士と顧問契約をオススメします。

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岩見沢市消費者センター(https://www.city.iwamizawa.hokkaido.jp/i/kakuka/syohisyacenter/cooling_off/houtei.html)参照

相談者:やった!お金が返ってきますね!

私:現実はそんなに甘くありません。任意交渉で大人しく全額返金されるケースはむしろ稀です。訴訟やその先の強制執行まで必要になるケースもありますし、そもそも会社に実体が無く、回収不能なケースもあります。
今回のご説明は非常に簡略化したもので、関係条文は複雑ですので迷ったらご相談されることをおすすめします。

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