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事案としては片側2車線の道路の右側車線において、相手方車両のすぐ後方に当方車両が位置しており、双方が渋滞によりほぼ停車状態にあったところ、①双方の車両がほぼ同時に左ウインカーを出し、②先に当方車両が左車線への車線変更を完了し、前後の位置関係が逆転したところ、③その後車線変更してきた相手方車両に右斜め後方から衝突されたというものです。
相手方保険会社の主張は、当方車両が二重追い越しに当たるというものでした。
もし二重追い越しに該当すれば、過失割合は10(当方):0にもなり得るのですが、ドライブレコーダーを見る限り当方が一方的に悪いとは思えませんでしたので受任することとなりました。
相手保険会社の担当者の対応ですが、ほとんど理由を示さずしばらくは5(当方):5を提示してきていました。
なかなか連絡も取れず、治療費の立て替え払いも拒否されていたので自賠責保険への被害者請求の後、最終勧告を出したところ、4(当方):6の提示となりましたが、怪我に関するものは一切支払わないという回答でしたので訴訟に移行することとなりました。
ここまでで大体事故日から半年少々かかっています。
訴訟になるとこれまでの交渉は基本的に全て白紙になります。
本件でも相手方弁護士は二重追い越しを主張し、過失割合の提示は8(当方):2となりました。
少額の請求でしたので地方裁判所ではなく簡易裁判所に係属したのですが、簡易裁判所は主張の整理を一切しないでひたすら準備書面の往復をさせようとしてくる傾向があります。
当方としてはドライブレコーダーの映像などを中心に二重追い越しでないことを丁寧に論証しましたが、裁判所は一向に判決を出したがらなかったので私の方から散々催促してようやく判決となりました。
判決では過失割合が2(当方):8で裁判外の交渉の際には全額否認されていた怪我に関する賠償も全て認められましたのでほとんど当方の勝訴と言えるような内容でした。
(受任時より2(当方):8であれば和解する方針でした。)
第一審係属から判決までで大体1年少々かかっています。尋問をしていないのでかなり長いと感じます。
相手代理人は控訴すると言っていたのですが結局控訴しなかったのでここで終結となりました(仮に控訴されていたら追加で半年〜1年程度かかっていました)。
本件は普通の事案の2倍〜3倍は長引いたように感じたのですが要因は以下の通りです。
(1)相手方保険会社が治療費の立替払いをしなかったので当方で治療費全額を立て替えて自賠責保険に治療費等を被害者請求する必要があった。
(2)相手保険会社の担当者とほとんど連絡が取れないので訴訟するしかない。
(3)相手弁護士(およびその背後の相手任意保険会社)に示談する気が全くない。
(4)裁判官が判決を書きたがらない。争点整理(心証開示)すらなかなかしてくれない。
判決の内容については、ウインカーを出したのが同タイミングかつ当方が先に車線変更を完了した時点で相手車両は白線を超えてすらないので二重追い越しには当たらない(=車線変更中の事故と近いものとして考える)とした上で、2(当方):8としています。
車線変更中の事故という類型で裁判例を分析しても、車線変更車が直進車より後方にいる場合は直進車:車線変更車=2:8というのが大体の相場ですので妥当な判断だと感じました。
私はよくお客様に対して訴訟はお勧めしませんとお話ししますが、本件は少額の交通事故訴訟の悪い部分が詰まっていたように感じましたので詳しめにご紹介させていただきました。