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無保険で交通事故を起こすとどうなるか

今回のテーマは無保険で交通事故を起こすとどうなるかというものです。
以前被害者側目線のコラム「交通事故で相手が無保険の場合の対応・備え」を書きましたが、今回は加害者側目線で書いてみます。

なお、当事務所では加害者側の事案はお受けしておりませんのであくまでも啓発記事となります。


事案の概要

先生!友人に借りた車で追突事故を起こしてしまったのですが、任意保険の運転者が本人限定だったようで任意保険が使えない状態です。
被害者の方は半年程度通院して後遺障害はないということでした。

順番に確認していきましょう。自賠責保険はどうなっていますか?

自賠責保険未加入の場合

そもそも普通自動車の場合には車検時に自賠責保険の更新が義務なので非加入の割合は低いです。
ただし、うっかり等で車検が切れていたというパターンや車検のない小型のバイクなどで自賠責保険が切れていたという事例を観測することがあります。

国交省のサイトに詳しく書いてありますが、自賠責保険の非加入は犯罪で1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金が科されます。いずれにせよ前科になります。

自賠責保険には加入していました。

任意保険未加入の場合

実際問題お金がないからという理由で加入していない人もいるそうですが、比較的軽微な事故でもざっくり以下の費用が発生します。
一般的収入の方にとってはとても払えないのではという金額になる可能性もあります。

1 治療費

120万円までは自賠責保険から出ますので本件のような事案では入院や手術がない限り自己負担となる可能性は低いです。
半年通院の場合で入院・手術がなければ通院頻度や治療内容によりますが、普通は50万円弱程度だと思います。
ちなみにムチウチの場合、裁判でも3〜4ヶ月から半年程度の治療期間が認められる可能性が高いので事故後の診断書に例えば全治2週間などと書かれていてもそれより長引く可能性があります。

2 通院慰謝料

例えば他覚所見のない(レントゲン・MRI画像等に異常がない)ムチウチの場合、裁判基準だと半年通院で89万円になります。
仮に同乗者がいればその人数だけ増えるのでかなりの金額になります。
上記自賠責保険の120万円の枠が余っていれば自賠責基準(通院日数×4300円)が補填されますがそれでも平均的事案だと半額以上は自己負担になると思います。

3 休業損害

仮に月額給与の額面30万円、20日稼働の場合、休業損害の計算における日額は1万5000円です。
他覚所見なしのムチウチでも休業日数15日程度は認められる可能性は十分あります。
そうすると1万5000円×15日=22万5000円となります。
高所得者の場合は当然もっと高額になります。
(自賠責保険から日額6100円が支払われますが上記治療費・通院費・通院慰謝料を支払って上限120万円に届いていない場合のみです。)

4 車の修理代

今回、友人の車を借りていたということなのでその修理費と被害者の車両の修理費がかかります。
国産車の場合、比較的軽めにぶつけただけでも30〜40万円程度はかかりますが物損に関しては自賠責保険は対象外です。
高級外車の場合は上記国産車の場合の倍以上かかります。

5 その他の費用

病院への交通費:タクシーは大怪我でない限り認められにくいので電車やバス代程度だが合計すると数万円程度に。

代車代:事故車と同程度のグレードまでだが国産車の場合は大体日額1〜2万円程度。
    修理なら2週間、買い替えなら1か月程度が上限。

レッカー代:1〜2万円程度。

休車損:代替車が調達できない特殊車両で営業車だった場合に営業利益の賠償が認められることもあります。

携行品・積載物:身につけているものや積載物が破損した場合にはその費用も賠償の対象に。

100万円を軽く超えてしまいそうですね・・・。一括で支払うのは厳しいです。

ちなみに、被害者の怪我が重篤な場合には以下の費用もかかります。ここまで行くと自己破産も検討することになると思います。

6 被害者の怪我が重篤な場合に発生する費用

後遺障害慰謝料:2800万円(1級)〜110万円(14級)まで。

死亡慰謝料:2000万円〜2800万円程度。

後遺障害逸失利益:認定された後遺障害等級に応じて将来の獲得年収の減額分の賠償が認められます。
 ムチウチによる神経症状だと年数が制限される傾向にあるが、それ以外だと67歳まででカウントするので1000万円を軽く超えるケースも珍しくないことになります。

例えば被害者(32歳)の年収が400万円で後遺障害等級が12級の場合、労働能力喪失率は14%なので行為省が逸失利益は約1200万円という金額になります。

とても払えないです。

上記の通り、交通事故は軽微なものでも被害者の属性によって賠償額が跳ね上がりますので、自動車を運転するのであれば最低限、対人対物無制限の任意保険に加入することをお勧めします。


以上。

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