ブログ

交通事故で相手が無保険の場合の対応・備え

2025年4月3日加筆修正。

今回のテーマは交通事故で相手が無保険の場合の対応・備えです。
ニュースで報じられるように外国人が日本で簡単に自動車免許を取得できることが問題になっていますが、こういった方は任意保険までしっかりと加入していないことがあります。
また、外国人の方に限らなくても最近は相手無保険の事案が増えたというのは同業者の間でもよく話題になります。
ちなみに2023年のデータで東京都において21%程度が任意保険未加入という状況のようです。
日本損害保険協会HP参照)

私自身、よく車の運転をするので相手が無保険の場合にどうなるのかというのは関心があったので実際に相手が無保険の場合の事件処理の経験に基づいて対応・備えをまとめてみました。
結論としては、たとえ弁護士に依頼しても回収できない可能性が相当程度あるので、自身の保険の特約等で自衛しましょうということになります。

なお、本記事では「無保険」とは自賠責保険に加入していない場合ではなく、任意保険に加入していない場合と定義します(自賠責保険の未加入は犯罪ですし、国交相のHPによれば車検対象車では自賠責保険の加入率はほぼ100%とのことです。)。


事案の概要

先生、車を運転していたら追突されたのですが、相手が任意保険に加入していませんでした。車の修理代も結構かかりますし、怪我の治療費も心配です。

追突ということは当方に過失はなく、本来であれば損害の全額を請求できるのですが、相手が無保険だと最終的に自己負担が生じるリスクがあります。事故直後の対応から順番に注意点を説明していきます。

事故直後の対応

意外ときちんと実践されている方が少なくて驚くのが事故直後の対応です。
重要度ごとに色分けしていきます。
(最重要:。重要:オレンジ。できればやっておく:。)


警察への通報
→事故相手から警察沙汰にしないで欲しいなどと言われることがありますが警察は絶対に呼びましょう。通報は義務ですし事故証明書を作成しないと何の請求もできないことになりかねません。
また、救護義務違反になりかねないので相手が怪我をしているなら救急車も呼んでおきましょう。
(本件のようなケースでは普通は追突した加害者側で手配するでしょう。)

任意保険会社への連絡
→すぐに連絡しないと保険会社の免責事項に該当しかねません。
本稿のテーマからは少しそれますが自転車事故について、事故からしばらくしてから火災保険の適用を受けられることが判明した場合、保険会社に連絡前に払った仮払金・弁護士費用などは自己負担になります。

相手の免許証の撮影
→事故証明書に記載されますがそれまでに動く必要がある事案で初動対応が遅れる可能性があります。たまに相手の手書きメモ(住所・名前)などを見せられることがありますがそのようなものをもらうくらいなら免許証を撮影した方がいいです。
弁護士的にも相手の名前の正確な漢字表記などは問い合わせ段階で知りたいところです。

相手の連絡先等の確認
→相手の住所氏名は上記③で分かりますがそれ以外の情報を確認しましょう(あくまで任意です)。
電話番号、職業、勤務先、家族構成など。
相手が無保険だと回収可能性の判断材料としてかなり大事です。
一方で任意保険に加入しているのであれば電話番号程度の聴取で構いません。

事故車両の撮影
→相手が任意保険に加入しているケースでは事故後修理入庫する際に修理工場に撮影してもらえますが、無保険だと当方が車両保険に加入していないといわゆる損害レポートの作成ができません。
のちに裁判になった際に重要な証拠になるのでできれば事故直後に双方の車両の写真を多めに撮影しておきましょう。
弁護士的にも相談時に事故の衝撃具合=怪我の具合を知れるので非常に助かります。

ドライブレコーダーをスマホで撮影・SDカードの保全
→動画が上書きされて消えてしまいましたという話をよく聞きます。
なのですぐにカーナビでドラレコ映像を再生してスマホで動画撮影するのがおすすめです。
SDカードも抜いておいて方がいいですが自走する場合、帰りに別の事故に遭う可能性もありますのでやはり直後にスマホで動画撮影しておくべきです。
ちなみにドライブレコーダーがないと多くの事案で過失割合を争うことが難しくなります。

結構やることが多いんですね。事故後でパニックになっている時にちゃんとできるか不安です。その後の流れはどうなりますか?

事故後の対応(物損について)

物損については修理工場に入庫して最低でも修理見積もりを作成していただきます。
【相手が任意保険に加入している事案】であれば以下の流れです。

①ディーラーに連絡して入庫の予約。レッカーが必要な場合、普通は相手任意保険会社が手配。

②相手任意保険会社に入庫先の名称・電話番号・担当者名を伝える。

③相手任意保険会社が修理工場にアジャスター(修理代を中立に査定する有資格者)を派遣し、修理工場と修理代の協定を結ぶ。

④入庫中は代車を利用(相手保険会社が手配するものを利用する方が揉めないのでベター。ただし、過失割合等によっては自分で手配しろと言われる。)。

⑤損害額につき交渉。

一方で【相手が無保険の事案】だと以下の流れになります。

❶ディーラーに連絡して入庫の予約。レッカーが必要な場合は自分で手配。

❷自分の保険で車両保険に加入していれば自分の保険のアジャスターに損害レポート作成を依頼できる。
実際に車両保険を使わない場合、レポート作成により暫定的に下がった等級は回復しますが、任意保険更新のタイミングまでに和解できないと下がった等級のまま更新する結果、保険料が上がるという不利益が発生すると言われたことがあります(保険会社ごとに対応が異なる可能性がありますのでご自身でご確認下さい)。

❸損害レポートを作成できた場合はそれをもって交渉。損害レポートを作成できなかった場合は自分で撮影した写真+通常の見積書又は領収書で交渉です。
損害レポートがないと修理代金の相当性が争われる可能性が高まります。
普通の修理や見積もりだと修理工場によっては写真撮影をすごく嫌がりますし、構図が下手で分かりにくかったり画素が荒くて使えないことが多い印象です。

❹代車は自分で手配して相手に請求しますが、回収できないリスクを負いますので代車特約(等級に影響なく1か月まで利用できるとするものが多い)に加入しておくと安心です。

❺最終的に相手から回収できない場合にご自身の車両保険を使って直すか、諦めるか。

今回の事故って追突事故で私は完全な被害者なのに相手が無保険だと自分のリスクで色々手間をかけないといけなくて理不尽ですね。

事故後の対応(怪我について)

【相手が任意保険に加入している通常の事案】であれば以下の流れです。

①相手保険会社が病院の治療費を立替払いしてくれる。

②通院終了後に交渉。

一方で【相手が無保険の事案】だと以下の流れになります。

❶健康保険を使って自費で通院。第三者行為の傷病届を使えば交通事故でも健康保険が使えますが嫌がられる病院も存在します。
自分の保険で人身傷害特約※に加入していると治療費の立替払いをやってくれる可能性があります。

※無保険車傷害特約という名称の商品が多いですが、例えば私の加入する保険だと人身傷害特約に含まれますので以下でも人身傷害特約と呼称します。
保険会社ごとに微妙に違うのでご自身の責任でご確認下さい。

❷治療終了後に自賠責保険に被害者請求して治療費・通院費・通院慰謝料(自賠責基準)・休業損害(自賠責基準)を回収します。
ただし、自賠責保険の上限は傷害の場合120万円ですから人身傷害特約に加入していないと治療費すら自己負担になるリスクがあります。
人身傷害特約に加入していても、この時点ではせいぜい治療費の立て替え分程度しか払ってくれません。

❸上記自賠責基準との差額を相手に請求します。
通常の債権回収事案と同じで相手が無資力なら回収できない結果、損害につき自己負担が原則となります。
相手の就業先、資産のありかなどを強制的に探す方法は限定的なので回収できないこともザラにあります。
(そもそも資産のある人は任意保険に加入することが多いです。)
ただし、無保険車傷害特約に加入していれば事故相手への判決確定により当方の保険会社が支払ってくれる可能性があります(保険ごとに異なる可能性があるのでご自身の責任で約款をご確認ください。)。

債権回収については当ブログの債権回収に関する記事をご参照ください。

実際に裁判等までやるかですが、一般的に回収可能性は低いので①弁護士費用特約・②無保険車傷害特約(人身傷害特約)が両方あるケースか、①弁護士費用特約がある上で回収可能性がありそうなケースということになるでしょう。
いずれにも当てはまらない場合は、自賠責保険への被害者請求のみで終わりとすることも選択肢に入ってきます。

治療費すら払ってもらえないことになる可能性があるってことですよね。信じられないです。

制度設計として、最低限の補償は自賠責保険でなされているという整理なのだと思いますが現代社会の実態にそぐわないと思います。自賠責だけだと軽微な事故であっても明らかに不十分ですし、重大な後遺障害の残る事案ではそのギャップはより大きくなります。

自衛する方法

以上を踏まえて以下に自衛する方法を列挙します(重要度は上記と同様の色分け)。
これらを実施しても万全にはなり得ませんが、それは我が国の自動車免許制度や民事執行法という立法政策の問題・責任ということになるのではないかと思います。

全方位のドライブレコーダー
→最新のものだと全方位で走行速度やウインカーの作動状況なども記録されます。
相手が無保険かどうかにかかわらず重要性が増していますが相手が無保険だと裁判になる可能性が高く、より重要だと思います。
10万円〜20万円前後かと思いますがなるべく付けた上で操作方法について確認しておくべきです。

車両保険
→物損のうち修理代に関しては最終的には車両保険でカバーすることになります。
軽微な修理ならまだしも購入直後に追突で全損、相手が無保険だとローンだけが残る悲惨な状況になる可能性があります。
とはいえ保険料を押し上げる大きな要素なのでコストが大きく、全員が必ず付けるべきとまではいえないと思います。

代車特約
→裁判所は損害レポート作成にかかる期間+修理期間において代車使用の必要性を認めますが、修理においては2週間、買い替えにおいては1か月が代車使用の相当性の限度とされます。
実際にこの期間で収まらないことが多いので代車特約(等級が変わらず1か月代車を使えるというものが多い)に入っておくと安心です。
特に車がないと生活できないような方においては重要度が高いです。
相手が無保険だと全額自己負担となる可能性があるところ、1か月も借りると数十万円になりますので無保険対策という観点からは重要です。

なお、レッカー費用については附帯しているものがほとんどだと思うので説明を割愛します。

人身傷害特約(無保険車傷害特約)
→相手が無保険でも人身傷害特約で治療費立替払いをやってもらえる可能性があり、もしやってもらえれば負担感はかなり減ります。
入院すると治療費だけで自賠責の120万円はあっという間に超えますので無保険車対策という観点からは必要な特約です。
上述した通り、相手への判決確定でその分を支払ってもらえるのであればかなり強力な補償だと思います。
車両保険よりは優先度が高いです。

ご自身に適用される保険の確認
→当方が歩行者又は自転車を運転中に無保険車に轢かれた場合を想定した対応です。
東京都では自転車保険が義務化されていますが、自転車保険・傷害保険の中に弁護士費用特約がオプションになっているものもあり、本件のような事案を想定するならつけるべきでしょう。
ご自身の自動車保険の補償範囲を拡大する特約で歩行中・自転車運転中の事故をカバーするという手段もあります。
また、ご家族が加入している自動車保険で保障されるパターンもあるので自分が運転しない場合も自分が被保険者なのかは要確認です。
さらに、本件の事案と少し離れますが、自分が加害者になった場合に、加入している火災保険によって相手への賠償金・弁護士費用を出してもらえる可能性があります。

弁護士費用特約
→本件のような事故で仮に後遺障害がなかったとしても損害額はトータルで200〜300万円程度にはなることが多いのではないかと思います。
みずほ銀行のホームページによれば、日本人の貯金の中央値は20代の独身で20万円程度、30代の独身で75万円程度、40代独身で53万円程度とのことです。
そうすると現実的に考えてすんなりと請求金額が全額支払われる可能性は低く、多くの事案では裁判を経て資産を差し押さえるところまで必要ですが普通に依頼するとかなりの金額になってしまいますので弁護士費用特約は必須だと思います。
ちなみに弁護士費用特約における弁護士報酬基準も一律ではないですし、多くの弁護士が受任を拒否する保険会社もありますので結局のところ安心して車を運転するには相応のランニングコストがかかることになります。

ちなみに、外国人相手(特に一時的な滞在者)だと回収の見込みはほとんど立たないことが多いです。

加害者はそもそも任意保険にすら加入していない方なので、社会的地位がある方ではないとか資産・収入が低い可能性が高いことが多いので一般的に回収可能性は高くない類型の事案です。
しかし、弁護士費用特約は等級に影響しない(=使っても保険料が上がらない)のでダメ元でやるだけやってみることもできますし、自賠責保険への被害者請求も一任できるので弁護士費用特約はどのような事案でも有用だと思います。

以上


交通事故に遭われた際は当事務所までご相談いただければと思います。

関連記事

  1. 回転寿司で醤油差しを舐める行為について
  2. コロナ不倫!?探偵費用って請求できるの?
  3. 共同親権に関する民法改正のまとめ
  4. 自宅学習便利グッズ紹介【受験生応援企画】
  5. なぜ離婚事件で弁護士が必要なのか
  6. 相続法改正で慰留分の請求が容易になります。
  7. 立退料ってなんだろう…?
  8. 最近引っ越したんだけど敷金って返ってくるの?

目次

PAGE TOP