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相続ってどの士業に依頼すればいいの?

今回のテーマは『相続ってどの士業に依頼すればいいの?』、すなわち相続発生時に依頼すべき専門家は誰なのかです。

いざ相続が発生すると時間も無いしやることも多くて大変なのですが、弁護士、司法書士、税理士、行政書士など結局誰に頼めばいいのかわかりにくいのでこの記事を読んで少しでも負担を減らしていただければと思います。


各士業ごとの特徴

先生! 先日母が亡くなったのですがそれなりに遺産があって何から手をつけていいかわかりません。
そもそもどの士業に依頼するのがいいのですか?

それぞれの士業について、以下の表の通り、やっていい業務とやってはいけない業務、得意不得意などがありますので事案に応じて使い分けましょう。

弁護士:唯一紛争介入を許されている法律の専門家で相続法に精通しています。実は税務も登記も弁護士の資格があれば全てできるのですが、通常は実務能力がないので提携する専門家に依頼します。

行政書士:行政への許認可及びそれに付随する書類作成を代行する資格です。

税理士:税金の専門家です。相続税の基礎控除を超える場合には確定申告が必要なので相続を専門にされている税理士は多いです。

司法書士:登記業務の専門家です。令和6年4月1日より不動産の相続登記が義務化されるので今後必要とされる場面はますます増えるでしょう。

弁護士に依頼すべき場合(紛争が生じる具体例)

弁護士に依頼すべき事案ってどんな場合ですか?

相続人の間で、①相続人が誰か、②相続財産の範囲、③具体的分割方法、④寄与分・特別受益などについて争いが生じた場合、相続人を代理して他の相続人と交渉できるのは弁護士だけです。

※認定司法書士も140万円以下ならできますが相続でその金額で紛争になるケースはほぼないので除外しています。

①相続人が誰か

具体例として相続人が亡くなった後に認知の訴え提起することで相続人が増えるケースなどがあります。

②相続財産の範囲

具体例として亡くなった方の名義の不動産があってもお金を出したのは他の相続人だから相続財産に含まれないなどとして紛争になるケースなどがあります。

③具体的分割方法

具体例はどの財産を誰にどのように振り分けるかです。預貯金のみであれば法定相続分で分ければいいのですが不動産は切り分けることができず、その価格も唯一絶対ではないので紛争になります。

④寄与分・特別受益などについて争いになる場合

具体例は相続人の1名が生前介護をしたとか不動産を贈与してもらったなどの場合にこれを調整しないと不公平であるということで紛争になります。

紛争が生じたら弁護士に依頼するほかないのですね。その場合登記や税務はどうなりますか?

登記は遺産分割協議完了後に司法書士に依頼します。相続税の確定申告については必要であれば税理士をご紹介いたします。

紛争が生じていない場合は誰に頼むのがいいのか

紛争が生じていない場合は誰に頼むのがいいのですか?

遺産の内容で変わるので以下①〜④で場合分けして説明します。

①遺産が沢山あるケース

税理士に依頼すれば遺産分割協議書の作成、司法書士への相続登記の手配、相続税の申告まで全部やってくれます。
ただし、税理士が関与する場合(特に自分が直接依頼していない場合)は本当に平等な分割になっているのかどうかについて、遺産分割協議書をしっかりと確認する必要があります。


例えば、相続税の申告の場面と遺産分割協議の場面では遺産の評価についての基準時や算定方法についての考え方が違う点がありますがそういった場面で法律的な運用を無視して一人の相続人を不当に利する内容となっていることがありました。

相続人の誰か一人が税理士に依頼して遺産分割協議書を作成し、他の相続人に署名押印を迫るというのはよくあるシチュエーションなのですが、すぐに応じずに一旦弁護士の法律相談を受けることをお勧めします。

②遺産に不動産があるが基礎控除の範囲内のため確定申告は不要なケース

司法書士に依頼すれば登記のついでに遺産分割協議書も作ってくれるのでお勧めです。

③遺産に不動産がなく基礎控除の範囲内のため確定申告は不要なケース

このようなケースであれば遺産分割協議書の作成のみで済みますので弁護士に依頼するのがお勧めです。
このようなケースなら報酬も一般的に十数万円であることが多いですし法律的な観点からの助言も期待できます。

④遺産がほとんどない又は借金でマイナス

弁護士に依頼して相続放棄をするのがいいです。
相続放棄は書類作成のみならず、どこまでの行為が許されるか(例えば亡くなった夫名義で契約していた物件に妻が住み続けられるか、出て行くとして勝手に契約を解除できるか等)、申請期限の3ヶ月をどのように考えるかなどなかなか難しい法律問題が多いので弁護士に依頼した方が安心です。
被相続人の死亡を知って3ヶ月以内にしなければ借金が降ってきますので急ぐ必要があります。

なお、限定承認という手続もありますがデメリットが多くお勧めしません。

少しでも費用を節約するには

専門家が沢山出てくるのでお金が沢山かかりそうですね。少しでも費用を節約するためにできることはありますか?

遺言作成すべきだと思います。これがあれば遺産分割協議のコストが大幅に削減されます。

令和元年7月1日施行の改正相続法では自筆証書遺言の様式が簡略化され、保管制度も新設されましたので公正証書遺言に抵抗がある場合でも作りやすくなったと思います。

ただし、遺言の内容は相続人全員の合意でも変更できないという見解もあり、その内容によっては新たな紛争を生み出してしまいますので内容については弁護士に作成やチェックを依頼すべきだと思います。

以上


相続でお悩みの方は当事務所までご相談下さい。

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