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一度決めた養育費の金額変更が認められる場合は?問題になる事例3選

離婚

今回のテーマは養育費の事情変更です。
一度養育費を決めても、長い支払期間の中で毎月の養育費を増やしたい・減らしたいという事態が生じることはあるでしょう。

家裁の調停委員のマニュアル本的位置付けの松本哲泓著『即解330問 婚姻費用・養育費の算定実務』(以下参考文献①)では、養育費の支払い義務者にとって厳しいスタンスがとられており、事情変更はおよそ認められないのでは?という疑念がありましたが、最近いくつか事件をやっているうちに、実務はもう少し緩やかに事情変更を認めているのでは?と思うに至り、本記事を書こうと思いました。

実際に私が担当している事案は解説に用いることが難しいので、最近発売された矢尾和子・鈴木千帆編著『家族法改正対応 養育費・婚姻費用算定の実務 家庭裁判所の運用とその理論的根拠』(以下参考文献②)の見解をベースに解説してみます。これは裁判官が実名で出版しているもので権威ある文献です。


1 事案の概要

先生!妻と離婚する際に裁判所で養育費の金額等を決めたのですが、その後色々あって支払金額を減らして欲しいです。ただ、元妻からは逆に増やして欲しいと言われているのでお互いの主張が裁判所で認められるかどうか話を聞きたいです。

事情変更は難しい論点で、権威ある文献であっても見解が統一されていないので事案次第・裁判官次第な部分はありますが、なるべくクリアになるように順番に説明していきますね。

2 養育費の金額変更の根拠・要件

一度合意等で決まった養育費を変更する法的根拠は民法880条(扶養に関する変更規定)の類推適用等と言われています。

その要件は、松田亨著『婚姻関係事件における財産的給付と事情変更の原則』(家月43巻12号1頁)等に記載の以下の通りです。

①合意等の前提になっていた客観的事情が変更したこと
②事情の変更が当事者の予見した又は予見しうるものではないこと
③事情変更が当事者の責めに帰することのできない事情により生じたこと
④合意等どおりの履行を強制することが著しく公平に反する場合であること

正直言って、どうとでも解釈できてしまうのが基準が不明確な理由のその1です。
さらに、先例性の強い判例が少ないのが基準が不明確な理由のその2です。

「予見」できたか、「責めに帰することのできない事情」かどうか、「著しく」公平に反するかどうかなどはかなり解釈の余地がありそうですね。家裁は裁判官の裁量が大きいですからね。

3 子の年齢が15歳になったことが事情変更に当たるか

養育費算定の計算式で、14歳以下の子の生活費指数が62、15歳以上が85、大人が100と定められている関係で、子が15歳になったら金額を増やすべきでは?という論点です。

参考文献②においては、子が15歳になることは予見しうる(上記要件②)ので原則は事情変更に該当しないとしています。
ただし、年数の経過により収入の増減等他の事情が発生している可能性があり、そうであれば結果として事情変更が認められるとしています。

ちなみに、参考文献①では「予測できても・・・養育費の増額を求めることができることは多かろう」としています。

4 収入の増減が事情変更に当たるか

参考文献②においては収入が2割ほど増減した場合は事情変更に該当するとしています。
最近、調停委員から似たような発言を聞いたので、参考文献②のような見解が一般的になっているのかなと思います。

一方で、参考文献①においては、残業代の減少は著しい収入の減少が今後も継続するような例外的な場合を除いて事情変更に当たらないが、収入の増加は事情変更に当たるとしています。
ただし、合意時には無職の権利者(専業主婦)が合意後に保育園を利用して働き始め、収入が増加した事実は事情変更には該当しないという記載がありますが、理論的に整合性があるのか疑問です。

例えば、若くして離婚した場合、元夫が順調に出世していったら養育費も増えるんですね。

5 子の私立中高・大学への進学が事情変更に当たるか

算定表は公立の中高の学費しか考慮されていないので問題になります。
合意時に具体的に予測できる場合は事前に取り決めますが、分からない場合は別途協議するという条項を入れるだけのことが多いです。

(1)学費を義務者に負担させるべきかどうかの判断基準

以下の二段階で検討しますが、位置づけとしては冒頭の4要件の④に当たります(上記文献②参照)。

ア 義務者において私立中高・大学への進学を明示又は黙示に同意しているか

イ 権利者及び義務者の収入状況、学歴等に照らして子を大学に進学させることが合理的であるといえるかどうか

明示の同意については学校説明会に同行していた等の客観事情や夫婦間のLINE等のやりとりで立証できるかという問題になります。
黙示の同意については同居中に取り決めていれば原則認められます。

離婚後しばらくしてから入学を決める場合にはアの要件では厳しそうですね。

要件イについて、大学への入学であれば、最近だと夫婦ともに4年制大学ということも珍しくないので平均以上の収入があれば事情変更が認められる可能性は比較的高いように思います。

一方で、私立の中高だと必ずしもその限りではないので、お子様が入学するに至る経緯等から主張・立証していくことになります。

ちなみに、私立高校の授業料は無償化されましたが、公立高校と比べた場合に費用の多くかかる部分(入学金、施設料、制服代、修学旅行代等)の加算を求めることになります。

※加算の具体的な計算方法は過去記事「婚姻費用・養育費における私立学校の学費の扱い」をご参照ください。

6 まとめ

事情変更の調停は認められる要件が厳しく、変更される金額も比較的少額ではあるものの、特に以下の2パターンでは実際に弁護士に依頼してでも調停を申し立てる価値があるように思いました。

(ア)収入が大幅に増減した場合
→収入減少についてはそれが一時的なものではないかが厳しく見られますのでなかなか難しいです。仮に失業しても失業手当も加味しますし原則として収入ゼロにはなりません。
一方で、収入増加については比較的緩やかに事情変更が認められる余地があると思います。例えば賞与の割合が大きい業界であっても3年程度の平均をとるのが一般的ですので、3年連続で大きな収入を得ていた場合には養育費の金額が大幅に上がる余地があります。

(イ)大学に入学が決まった場合
→上記の通り、大学入学については事情変更も加算も比較的緩やかに認められる一方で、私立だと学費等はかなりの金額になりますので事情変更を申し立てる実益があります。


離婚に関連するご相談については世田谷区二子玉川のふたこ法律事務所までお問い合わせ下さい。

以上

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