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今回のテーマは住宅ローン付不動産の財産分与の方法です。
計算方法につき定説がなく、いくつかの有力な説があってモメやすいポイントです。
シンプルな事案であれば売却額から残ローンを引いて半分で分ければいいのですが、頭金や繰上げ返済に特有財産が入っているという主張があったり、別居後に払っているローンがどういう扱いになるか、片方が不動産を買い取る場合にはどうするかなど複雑な問題を抱えています。
今回は私の経験上、実際に私が主張したり相手に主張されたりした計算方法を紹介していきます。
目次
先生!現在妻と離婚調停中なのですが自宅マンションの分与方法でモメています。
このマンションは婚姻後に5000万円で購入しました。頭金1000万円は私の母からの贈与で残りの4000万円はローンです。1年前に別居してからは私のみが住んでいます。
マンションの査定をしてみたところ、ちょうど6000万円ということでした。
いくつかの考え方がありますが結論が大きく変わるので揉めやすいポイントですね。
順番に説明していきます。
まずは以下の書類を集めましょう。
購入価格、当初ローン借入額がわかります。
別居日時点でのローン残高及び別居日後の返済額がわかります。
不動産会社に連絡して現在時点での査定書を作ってもらいます。
購入から時間が経っていないなら購入時の仲介業者に依頼してもいいと思います。
査定書が送られてきたら担当者に連絡して具体的な相場感などを確認しておきましょう。
住宅購入にあたり、独身時の預貯金を使ったとか親からの贈与があったという場合にはそれを立証する資料を準備します。
ここは通常の財産分与における特有財産が認められるかと同様の問題が発生しますので立証は一筋縄ではいかないこともあります。
具体的にはどういう計算方法になりますか?ちなみに私の件だとマンションは今高いので売ってしまおうという話になっています。
極めてシンプルに考えると、査定価格6000万円から残ローン3000万円を控除した額を半分ずつ(1500万円ずつ)で分けるのが原則です。
ただし、本件では相談者の親から頭金1000万円が出ているのでその分を考慮して分けましょうという考え方です。
学説というよりは事実上そういう主張がされることがあるという感じで頭金1000万円の処理についてもケースバイケースです。
仮に頭金1000万円そのまま控除ということであれば相談者の取得額が2000万円、妻の取得額が1000万円です。
どちらかといえばこういう主張が多い気がしますが、頭金について独自に傾斜をかける工夫(例えば上記の半額にするなど)をする主張も見られるところです。
要するに特有財産部分は財産分与の対象から除外し、残りを二分の一とする考え方です。
メリットとして家裁の財産分与一覧表が使えます。
不動産購入時の頭金1000万円の取得価格5000万円に占める割合は0.2です。
この割合に現在時点の評価額6000万円を掛けると1200万円になります。
財産分与の対象額は現在時点の評価額6000万円−残ローン3000万円−上記1200万円=1800万円です。
この半分の900万円に上記1200万円を加えた2100万円が相談者の取得額。
妻の取得額は上記1800万円の半分の900万円となります。
売却するのであればこの金額を各自が取得、相談者が買い取るのであれば妻に900万円支払うことになります。
今回の試算では反映していませんが別居後のローン支払いについても頭金のように考えれば計算に組み込むことも可能です。
(財産分与においては別居時のローン残高が基準になるため、別居後のローンの支払いを分けて考えないと不公平になるという考え方があります。上記のように頭金に準じて計算する方法の他に、相手の合意が得られれば分与時の残高で計算する(=ローン残高の基準時をズラす)などの方法もあるかもしれません。)
この説だと不動産全体が財産分与の対象になります。
また二分の一で分けないので財産分与一覧表が使えません。
まず、各自の寄与額を算出します。
相談者の寄与額は頭金1000万円、別居後の返済額(仮に月15万円として12ヶ月分で180万円)、婚姻時の共同返済額820万円の半額の合計1590万円。
※財産分与においては別居時のローン残高が基準になるため、別居後のローンの支払いを分けて考えないと不公平になるという考え方。
妻の寄与額は婚姻時の共同返済額820万円の半額の410万円。
双方の寄与額の合計が2000万円。
これを純資産額(現在評価額−ローン残高)=3000万円で按分する。
具体的には相談者への分与額は3000万円×1590万円/2000万円=2385万円。
妻への分与額は3000万円×410万円/2000万円=615万円。
売却するのであればこの金額を各自が取得、相談者が買い取るのであれば妻に615万円支払うことになります。
※具体的に寄与の程度を決める計算方法は様々あるようなので、あくまで計算方法の一例となります。
※※今回の試算で(3)説が相談者に特に有利に見えるのは(3)説のみ別居後のローン支払いを考慮しているからというのもあります。これを考慮しない場合は妻への分与額は750万円です。
全然結果が変わりますね。
事案によって使い分けましょうとされているので逆にわかりにくいですね。
結局は当事者が合意すればいいので実際にはザックリやることも多いと思います。そういう意味では計算式の意味合いに説得力があるかの方が大事かもしれません。
(1)説はシンプルでわかりやすいです。財産分与一覧表(家庭裁判所の書式)も使えます。
(2)説については(1)説と比べて不動産価格の変化を反映する形で分与できるメリットがあります。
また、特有財産の金額が大きくない事案では二分の一ルールを崩すべきではないという指摘がある(秋武憲一著『離婚調停』(日本花序出版、2021年第4版、358頁参照))ので特有財産の金額が大きくないケースではこの説が妥当といえそうです。
財産分与一覧表も使えます。
ちなみに別居後のローン支払いについても頭金の取得価格に対する割合のところに加算すれば、計算に入れることも可能です。
(3)説について、様々な事情を取り込んで最も柔軟に計算できると思いますが、財産分与一覧表を使えないのがデメリットです。
とはいえ、寄与の割合に偏りがある場合は、財産分与支払義務者にとって有利な説と言えるでしょう。
結局は(1)(2)(3)の計算式の説明を見て、どれがしっくりくるかということかもしれません。
以上
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