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東京地判令和05.02.14のご紹介

今回は交通事故に関するクラシックカーの修理範囲の裁判例です。

【判決の概要】

希少性の高いクラシックカーの通常の損害としての必要かつ相当な修理方法として、損傷部位の(全塗装ではなく)部分塗装の範囲で修理費用を認めた。
また、損傷部位とそれ以外の塗装状態に差が出ることを踏まえ、評価損として修理費用の5割相当を認めた事例(判例時報2025年7月1日号掲載)。

【私なりの要約・解説】

1967年製のマセラティ・ミストラルという高級クラシックカー(裁判時の市場価格は原告の主張ベースで1485万円程度)が、その右側面後部を信号無視して交差点に侵入してきた車両に衝突されたという事案です。
修理費用につき全塗装か部分塗装かが争われましたが、裁判所は骨董的価値が高い希少車を公道で走らせる場合は、美術品運搬と同じように保険加入を行うといった自衛措置が社会通念上求められるので、骨董的価値に起因する損害はいわゆる特別損害に相当し、加害者がそうした価値を知っていたなどの特段の事情のある場合を除き賠償は認められないと判断しました。
一方で、部分塗装になることで市場価格が下がる部分を評価損として高めの修理代の5割を認定してバランスを取っています。

クラシックカーにおいては特殊な保険があるそうですが、そうした保険への加入が求められるという判示はなかなかインパクトがあるなと思って紹介しました。

ちなみに、クラシックカーまでいかない旧車やカスタムカーというのも物損で非常に揉めやすいです。
カーセンサー・グーネットなどで検索しても出てこないレベルの車両だと一部マニアに人気があるといっても相手保険会社からは購入価格の1割程度を提示されることになると思います。
また、カスタムに関しては市場価格においてプラスに働かず、むしろマイナスになるので事故の賠償金で同じものを買えないという事態が想定できます。
この判決の言うように、公道で希少な車に乗るのであれば何らかの方法で自衛が必要になります。

以上

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