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離婚に向けた別居における私物の取扱い

大変ご無沙汰しております。

最近はInstagramにハマっておりブログが疎かになっていましたが、ようやくホームページの引っ越しが完了したのでブログを再開します。

今回のテーマは『離婚に向けた別居における私物の取扱い』、つまり別居時に置いてきてしまった私物はどうなるのかです。

ある事件で高裁まで争って裁判官と1対1で議論して難しいと感じた論点ですのでぜひご一読下さい。

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相談者: 先生! 夫と離婚しようと思って別居したのですが、夫に暴力的な言動があったので着のみ着のままで出てきてしまいました。夫と住んでいた自宅には嫁入り道具や両親の形見、私の私物などがありますが取り返せますか?

私:結論から言うと相手次第です。相手方が徹底的に拒否してきた場合、最終的には諦めることになります。

相談者:どういうことですか?

私:まずは今後の流れを確認しましょう。

今離婚に向けて別居を始めたところなので、まずは婚姻費用の分担請求調停を申し立てます。その後、離婚について協議や調停を経て合意できなければ最終的には離婚訴訟になります。

厄介なことに、私物の返還はこの流れの中では本筋として取り扱ってもらえません。

相談者:何でですか?

私:たとえば婚姻費用の調停や離婚調停の中で調停委員を介して返却の交渉はできます。この時点では調停委員もある程度積極的なので多くの事案ではここで返却がなされて解決します。

しかし、訴訟になった場合、私物の返却は本来離婚訴訟とは別に地方裁判所に訴えを提起しなければいけません(離婚訴訟の判決事項に含まれません)。

したがって、判決になりそうな事案では裁判官は冷たいです。

「私物にこだわるなら別訴提起して下さい。でも動産の特定なんてできっこないですから強制執行まで考えたらどうなんでしょうねぇ(諦めた方がいいと思いますよ?)」みたいな感じです。

相談者:実際に訴訟は難しいんですか?

私:そもそも私物について何があったか、その証拠はどうするかなどの問題に加え、費用面でも大抵のものは買い換えた方が安いと言うことになってしまいます。

相談者:そうすると、実際に調停などの段階で進んで返してくれる人はいないのではないですか?

私:そうでもありません。例えば私は、妻側で離婚を争う事案では妻の私物を返却しない事実について、夫がまだ婚姻関係継続の意思を捨てていないことを推認させる事情であるなどと主張しましたがこれは夫側からしたら嫌だったと思います。

尋問でも「なぜ私服を返してくれないんですか?」「一体何に使っているんですか?」「返さないということは復縁を望んでいるのでは?」などと言われてしまいますし、実際問題返すことによるデメリットはないので普通はすぐ返します。

したがって、滅多に問題にはならないけどいざ問題になったら回収が難しいので別居の際は大事なものは持ち出しましょうということです。

ちなみに私が担当した案件では最後の最後で無事に回収できましたが2年程度かかりました。

相談者:なるほど。とりあえずは他の離婚条件と絡めて早期に返却を実現できるように交渉していただくと言うことになりますね。安心しました。

以上

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