ブログ

東京地判令和07.01.30のご紹介

新コーナーとして裁判例の紹介カテゴリーを立ち上げました。
初回はSNSでも話題になっていた、不貞行為に関する最新判例です。

【判決の概要】

婚姻関係破綻後の不貞行為につき、当該不貞行為を行なった者が婚姻関係の破綻をもたらせた場合、同人は破綻後の不貞行為についても不法行為責任を負うとされた事例(判例時報2025年8月15日号掲載)。

【私なりの要約・解説】

婚姻関係破綻前にキス、お互いの性器に触れる、口淫をする等の性交類似行為を行い、婚姻関係が破綻した後に性交をしたという事案で慰謝料330万円の請求に対し、165万円程度を認容したという裁判例です。

以前不貞行為について解説したブログ「別居後離婚前に不貞するリスク」でも解説しましたが、別居後に不貞をした場合でも慰謝料が発生するとした裁判例は存在します。
ただ、本件は性交自体は婚姻関係破綻後になされているにもかかわらずに慰謝料が認められている点・その金額が比較的大きい点がポイントです。

基準になるのは最判平成08.03.26で、この判例は婚姻関係破綻後は原則慰謝料は発生しないと判示しています(最高裁の判断なので先例としての拘束力があります)。

何をもって婚姻関係の破綻を認定するかは結構微妙な判断になりますというのは上記過去記事でも触れている通りで、否定例の中には単に別居しているだけのもののみならず、別居後離婚調停を申し立てたものもあり、なかなか一般化しにくいです。
よく「別居後は不貞をしても慰謝料請求されない」などという言説が飛び交っていますが、実際には多くの事案で訴訟コストなどの観点から見逃されているに過ぎないということだと思います。

ちなみに、この裁判例では9月7日に別居し、翌月6日に離婚に関する公正証書を作成し、同月8日に離婚したという事実を前提に別居日に婚姻関係破綻を認定してますが、別居から離婚が非常に早いのでこの裁判例をもって別居により婚姻破綻という部分は一般化できないと思います。

そもそも性交類似行為であっても不貞行為に該当すると考えるのが一般的なので、この裁判例の事案はその時点でダメですが、この裁判例は、そういう有責行為をした方が婚姻関係破綻後の不貞行為に違法性が無いなどという話を持ち出すのは信義則に照らし許されないと判断しています。
結果として婚姻関係破綻後の不貞行為(性交)部分も違法と認定したので、165万円(うち慰謝料は150万円)という金額になったということになります。

あくまで事例判断ですが、同種の事案の方針決定に役立つものだと思います。

以上

目次

PAGE TOP